「偽痛風」という病名を聞いたことがありますか?
名前の通り、痛風と間違われやすい、激しい関節炎を起こす病気です。
特に高齢者に多く、突然の激痛や高熱を伴うことがあるため、注意が必要です。
💡 偽痛風とは?
偽痛風は、正式にはピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶による結晶誘発性関節炎と呼ばれます 。
原因: 関節の液中にピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶が沈着し、これが炎症を引き起こすことで、急性・亜急性の関節炎や関節周囲炎を発症します 。
この結晶は、顕微鏡で見ると特徴的な形をしています 。
主な病型
偽痛風にはいくつかの病型がありますが、特に高齢者に多いのが「特発性」です 。
- 特発性(高齢者):70歳代で6%、80歳代で14%、90歳以上では40%に認められるとされています。
- 代謝性:低マグネシウム血症、副甲状腺機能亢進症、ヘモクロマトーシス、低リン血症などの代謝異常に関連して発症することがあります 。
- その他:遺伝性や、外傷後、手術で誘発されるケースもあります。
💥 どんな症状が出るの?
偽痛風の臨床像は非常に多彩です 。
- 主な症状: 激痛、腫脹(腫れ)、熱感を伴う急性または亜急性の関節炎・関節周囲炎。
- 好発部位: 膝が最も多く、次いで手、肩、肘、足、股などの関節や関節周囲に起こります。
- 全身症状: 高熱、めまい、幻覚、体重減少など、全身症状が現れることもあります 。
- 検査値: 炎症反応を示すCRPが高値になることがあり、ときに 10mg/dl 以上にもなります。
高熱やCRP高値といった症状から、敗血症や化膿性関節炎との鑑別が非常に重要になります 。 
🩺 偽痛風の診断は?
特に高齢の患者さんで、以下の症状が見られたら偽痛風を疑う必要があります。
- 急性関節炎(主に膝)または急性関節周囲炎(主に手、足) 。
- 外傷歴がないにも関わらず見られる膝関節血症や肩関節血症 。
- 38°を超える不明熱と急性関節炎の合併。
- X線検査で、関節軟骨に線状・層状の石灰化が認められる場合 。
確定診断
- 確定診断は、関節液を穿刺し、その関節液中にピロリン酸カルシウム結晶を証明することです 。
- 採取された関節液は、やや白みがかった黄色で、血性が混じることもあります。
🏥 治療と予後は?
偽痛風の治療は、炎症を抑え、痛みを緩和することが中心です 。
- 安静・冷湿布:患部を安静にし、冷湿布で炎症を鎮めます 。
- 薬物療法:
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の投与 。
- ステロイド薬の経口または静脈内投与 。
 
- 関節穿刺:関節穿刺で関節液を抜き(排液)、関節内圧を下げることで除痛効果が得られます 。ステロイド薬の関節内注入も行われます 。
予後
- 1~2日の経過で出現し、約10日(ときに1ヶ月前後)で炎症は消退するとされています 。
⚠️ 高齢者の発熱・関節炎には「偽痛風」も鑑別に!
高齢者の方で、原因不明の発熱やCRPの再上昇が見られた場合、肺炎や脳梗塞などの疾患の治療中であっても、偽痛風も鑑別疾患の一つとして考えることが重要です 。
また、生命に関わる可能性のある化膿性関節炎の除外も非常に大切です 。
📝 まとめ
偽痛風は激しい痛みを伴う厄介な病気ですが、適切な診断と治療で炎症は改善に向かいます。もし突然の激しい関節の腫れや痛み、特に高熱を伴う場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診してください。



